書き出し「世界文学全集」と題されたこの本は、英米小説古典のカタログとしても、優れた「タイトル集」としても、有効である。まず、ディケンズの『デイヴィッド・コパーフィールド』は“自分がわが人生の主人公となるのか、それともその座は誰か他人に譲ることになるのか……”で始まる。実は今まで読もうとして何度か挫折した小説のうちの一つだ。その訳は訳が悪かったのだと思う。柴田訳では一気に引き込まれる、で、まあ最後まで読んでしまうだろう。
大切なのは一人称。「わたし」あるいは「ぼく」という違いは大きい。漢字かひらがなかカタカナか表記によっても変わってくる。ちなみに中野好夫訳は「私」である。
他に『アブサロム、アブサロム!』の訳はできるだけ読点を用いず、漢字を多めに使うことによって、息苦しく視覚的にものを描きだそうとしているように思えた。
柴田さんは優れた小説読みだ。ところで、私は結構名作のタイトルが気になるほうである。「ウェルテルの悩み」は読みたくならないし、「ベニスで死す」も同様に。ワイルドの『ドリアン・グレイの絵』刮目せよ〈風景〉といえばそのまま景色というかのような即物的な響き。「肖像」とか「肖像画」とか「画像」だとしっくりこないんだよなあ。これは目から鱗だった。
また、ミルトン『楽園喪失』言わずもがな、『失楽園』だと違うひとの話になってしまう。それに、直訳のほうがかっこよく聞こえることもある。シェイクスピアの『あらし(テンペスト)』も同じで、『嵐』だとおかしくなる。
加えて、作者名と生年・没年が記された後に気取りのない一口コメントが入っています。とりわけジョイスのところで笑いました。『ユリシーズ』は”やたら街なかで知りあいに出くわす小説だ”そう。あの人は昼日中から街なかをうろついていそうだもんなあ、と変に腑に落ちた。
新品:
¥1,106¥1,106 税込
ポイント: 11pt
(1%)
無料お届け日:
4月3日 - 5日
発送元: CIPECQ Shop 販売者: CIPECQ Shop
新品:
¥1,106¥1,106 税込
ポイント: 11pt
(1%)
無料お届け日:
4月3日 - 5日
発送元: CIPECQ Shop
販売者: CIPECQ Shop
中古品: ¥531
中古品:
¥531

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
書き出し「世界文学全集」 単行本 – 2013/8/13
柴田 元幸
(編集, 翻訳)
{"desktop_buybox_group_1":[{"displayPrice":"¥1,106","priceAmount":1106.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"1,106","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"GV2yy4Ej3xEi3CFSnQwpyjN06VL2o%2Bvgd7E2cRe5UlGeLDOlQ3r5vOhORyalTN86XBkwR%2FxYRNK%2BHcl6VkucpNiMLvQaJoch9L7LYS8YeHF0SMT46rxDieJMIUD%2FX8vQ%2FPaIJDNi0aa8GtDuF7mVC0WJ1K5sM%2B7PxZ2kr7u6W9ni0UjZEvXHaGalGhohtYFZ","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"NEW","aapiBuyingOptionIndex":0}, {"displayPrice":"¥531","priceAmount":531.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"531","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"GV2yy4Ej3xEi3CFSnQwpyjN06VL2o%2BvgdPD%2BlPsV0XBYXd9Pt4cvMML18iOLJouO35FI5M%2FUwYeXN7E6VUd%2BKOcZ3w2Z6ohvJl3wQmvKJDr8hnEM4rOlA%2BRePuqqt2%2FII%2FoH1eulNcyioBetubX%2Bab8qR%2FSKyC6%2FQOVJKob2lTFExpnv4VSQaQ%3D%3D","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"USED","aapiBuyingOptionIndex":1}]}
購入オプションとあわせ買い
書き出しを読めば世界文学がわかる……メルヴィル、ジョイス、ウルフ、カフカ、トルストイから児童文学、怪奇・幻想、そして詩まで、世界の名作があの「柴田訳」、しかも「新訳」で読める!
- 本の長さ244ページ
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日2013/8/13
- 寸法13.8 x 2.3 x 19.5 cm
- ISBN-104309206301
- ISBN-13978-4309206301
よく一緒に購入されている商品

¥924¥924
最短で3月31日 日曜日のお届け予定です
残り3点(入荷予定あり)
総額:
当社の価格を見るには、これら商品をカートに追加してください。
ポイントの合計:
pt
もう一度お試しください
追加されました
一緒に購入する商品を選択してください。
この商品を買った人はこんな商品も買っています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
著者について
1954年生。『アメリカン・ナルシス』でサントリー学芸賞、『メイスン&ディクスン』(上・下)で日本翻訳文化賞を受賞。著書に『翻訳教室』他、訳書にポール・オースター『幻影の書』他多数。
登録情報
- 出版社 : 河出書房新社 (2013/8/13)
- 発売日 : 2013/8/13
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 244ページ
- ISBN-10 : 4309206301
- ISBN-13 : 978-4309206301
- 寸法 : 13.8 x 2.3 x 19.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 424,550位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 13,804位評論・文学ガイド (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。

1954年生まれ。大学教師、翻訳家 (「BOOK著者紹介情報」より:本データは『モンキービジネス 2010』(ISBN-10:4863322828) が刊行された当時に掲載されていたものです)
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2015年1月29日に日本でレビュー済み
世界の文学へのきっかけとなります。
ただし,やっぱり良い小説は、じっくり全部読みたい。
ただし,やっぱり良い小説は、じっくり全部読みたい。
2016年3月26日に日本でレビュー済み
いわゆる名作とされる文学作品の書き出しを、イギリス文学、アメリカ文学、重訳で読む世界文学、英米児童文学、英米怪奇幻想、英米詩、序文の章立てで73篇収めています。読んだ作品、読もうと思いつつ買ったまま「積ん読」になっている作品に混じって、寡聞にしてホレス・ウォルポール、チャールズ・マチュリンのように全く知らない名前を見いだして、何故だか焦ったりしてしまいました。各作品の最初に添えられた訳者による短いコメントが膝を打ったり考えさせられたり笑えたりで、もしかすると一番の読み所かもしれません。
2013年9月19日に日本でレビュー済み
柴田元幸が選び・訳した世界の有名な小説を中心とした文学作品の書き出し集。イギリス文学、アメリカ文学、英語に訳された他の国の文学、英米児童文学、英米怪奇幻想小説、英米詩、序文というぐあいにバラエティ豊かに並べられている。
ところで編訳者は「前口上」で《これって名前は知ってたけど実はこんな感じなのか、なら読んでみようかな、と、読者がこの本を読んでいる最中に一度でも思ってくだされば》と書いているが、意外なほどに、そういう気持ちにならなかったのは何故だろうか。たぶん、ある本を読もうとするのは、もっといろいろな条件によるからかもしれない。ある本を読む、つまりその本の「書き出し」を読み出していることと、このような名前の知れた作品の「書き出し」が置かれていることとのあいだには距離がある。
たとえば映画の予告編に近いのは、本の帯文や惹句あるいは作品をアピールするコメントや解説・あらすじなどであって、小説などの「書き出し」ではないだろう。「書き出し」に相当するのは、映画のファーストシーンであり、それだけを単独で観る機会というのは、あまりない。
本書は編訳者が面白いと感じるほどには読者が興味をもてない種類の本のような気がする。
私にとって興味があったのは、小説のなかの小説として別格的にみなさざるをえない作品が選ばれ・訳されたところ。編訳者はトルストイの『アンナ・カレーニナ』について《この書き出しの一文はあらゆる書き出しのなかで最高じゃないかと思う。ひょっとしたら小説自体もあらゆる小説のなかで最高じゃないかと言いたい誘惑に駆られる》とコメントしているが、私はこの小説について、こんなふうに考えることがある。
世界のあらゆる人は『アンナ・カレーニナ』を読んだ(読了した)人とそうでない人の二つに分かれる、と。邦訳を読んだだけで、そんな偉そうなことを言っていいのかとも思うが、なぜか他のどんな小説についても、こうした大げさな考え方はできないのだ。ともあれオースターの小説の翻訳等で親しんできた人が、この19世紀のロシア小説をそんな風に評価していることが嬉しい。
その逆に、ずっと以前かなりの情熱をもって読んだ思い出がある『天使よ、故郷を見よ』の「書き出し」には、こんなものだったのかという落胆があったり色々ではある。
ところで編訳者は「前口上」で《これって名前は知ってたけど実はこんな感じなのか、なら読んでみようかな、と、読者がこの本を読んでいる最中に一度でも思ってくだされば》と書いているが、意外なほどに、そういう気持ちにならなかったのは何故だろうか。たぶん、ある本を読もうとするのは、もっといろいろな条件によるからかもしれない。ある本を読む、つまりその本の「書き出し」を読み出していることと、このような名前の知れた作品の「書き出し」が置かれていることとのあいだには距離がある。
たとえば映画の予告編に近いのは、本の帯文や惹句あるいは作品をアピールするコメントや解説・あらすじなどであって、小説などの「書き出し」ではないだろう。「書き出し」に相当するのは、映画のファーストシーンであり、それだけを単独で観る機会というのは、あまりない。
本書は編訳者が面白いと感じるほどには読者が興味をもてない種類の本のような気がする。
私にとって興味があったのは、小説のなかの小説として別格的にみなさざるをえない作品が選ばれ・訳されたところ。編訳者はトルストイの『アンナ・カレーニナ』について《この書き出しの一文はあらゆる書き出しのなかで最高じゃないかと思う。ひょっとしたら小説自体もあらゆる小説のなかで最高じゃないかと言いたい誘惑に駆られる》とコメントしているが、私はこの小説について、こんなふうに考えることがある。
世界のあらゆる人は『アンナ・カレーニナ』を読んだ(読了した)人とそうでない人の二つに分かれる、と。邦訳を読んだだけで、そんな偉そうなことを言っていいのかとも思うが、なぜか他のどんな小説についても、こうした大げさな考え方はできないのだ。ともあれオースターの小説の翻訳等で親しんできた人が、この19世紀のロシア小説をそんな風に評価していることが嬉しい。
その逆に、ずっと以前かなりの情熱をもって読んだ思い出がある『天使よ、故郷を見よ』の「書き出し」には、こんなものだったのかという落胆があったり色々ではある。
2021年6月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
優れた小説は例外なく、最初の一行から引き込み、何かの前兆や匂い、素敵な予感のように私たちをドキドキさせてくれるものであるが、柴田訳は、今時の日常的に使う違和感のない言葉で、数十年、数百年前の物語を目の前に引き寄せてくれる。ライトダウンした映画館の暗闇の中で、始まりの合図のブザーが鳴り響くようなワクワクが詰まっている。