メモや議事録をもっと素早く書けるようになりたい!
そんなときに役立つのが「速記」のスキルです。
人が話している内容をリアルタイムで書き取ることは、僕らが思っている以上に困難な作業です。僕らライターも取材等でメモをとるシーンが多いですが、そういったときに何度も「もう一度お願いできませんか?」と尋ねるのは、取材相手にも失礼ですよね。
最近はICレコーダーなどで録音した音声をあとからパソコンで打ち直すケースが多いようですが、こういった文字起こしの作業には、実時間の3〜4倍以上かかると言われています。
せっかくその場にいるのですから、まったくのゼロから文字起こしを行うのではなく、おおよその内容はその場で記録しつつ、録音データで後から補足修正を行う、といったやり方のほうがずっと効率的で時短ができます。
というわけで、この記事では速記初心者でも活用できる素早くメモをとるコツから、本格的な速記を学びたい人に役立つ情報などをまとめています。
速記のスキルは単なるメモ技術ではなく、記録する内容自体を深く理解する上で欠かせない頭の使い方を身につけることもできます。ぜひ一度お試しあれ。
速記とは?
速記は、言葉や文字を特殊な記号(速記符号・速記文字)にすることで、高速で文章を書くテクニックです。
人が話すスピードでそのまま文字起こしができるため、主に会議などで発言を記録するために用いられています。
そのスピードは、なんと1分間に300文字。速筆作家として有名な森博嗣氏の執筆速度が1時間6000文字であることを考えると、その驚異的な速度が理解できるかと(単純に比較できるものではありませんが)。
1時間6000字を目指せ!文章を早く(速く)書く技術・コツ【速筆家】
簡単にできる「プチ速記」の書き方・コツ
本格的な速記をマスターするためには、数十種類もある速記符号(速記文字)を完璧に覚え、使いこなせるようにならなければいけません。
それはちょっとハードルが高い……という方に、素人でもできる文章を速書きするポイントをまとめてみました。
小さい文字で書く
文字が小さくなれば、それだけ書くスピードがアップします。
かと言って小さすぎて後から読みづらくなってしまっては本末転倒なので、筆記具の性質や自分の癖などを把握した上で最適な文字の大きさを見極めましょう。
簡略文字・崩し文字を使う
速記符号のような本格的なものでなくても、複雑な漢字などは略字があったり、素早く書けるくずし字などもありますので、いくつか覚えておくと便利です。
また、自社の会議などで使用頻度が高い単語やフレーズ、人の名前などは、独自の簡略語(マーケティング部門⇢◯マなど)を作っておくのがおすすめです。
ひらがな・カタカナを使う
いっそのこと漢字を使わずに、ひらがな・カタカナを中心に書くというのも分かりやすく筆記スピードがアップします。
こちらも後からの読みづらさとの兼ね合いを考えて、最適なバランスを模索してみましょう。
キーワードだけを拾っていく
発言内容を一字一句間違えずにすべて書き写していこうなどとは考えず、ポイントとなるキーワードを拾うように意識するだけで、筆記スピードは格段にアップします。
発言の中でどこが重要なのかを見極めるトレーニングにもなり、一石二鳥です。
自分の意見・考えを入れない
筆記中に新しいアイデアが思いついたり、何か自分の意見があったりする場合、ついつい一緒に書き留めておきたくなってしまいますが、それが原因で肝心の発言そのものが書き写せないなんてことにもなりがちです。
自分が気になった部分や引っ掛かりを覚えた箇所などはアンダーラインを引いておいたり、「?」と小さく添えておく程度にとどめておきましょう。
速記を習いたい!(おすすめ講座・練習帳・アプリ・道具)
早稲田速記講座(早稲田通信教育センター)
速記法の一つである「早稲田式速記」が学べる通信講座。
学習スタイルに合わせて速習(6ヶ月)と全科(1年)が選べます。
早稲田式速記辞典
早稲田式速記の基本文字が収録された辞典。
実際の書き方がアニメーションで確認できるのが便利ですね。
早稲田式速記辞典(App Store/Google Play)
みんなの速記入門 V式
いくらか簡略化され初心者にも覚えやすい「V式速記」が学べるテキスト。
個人的なメモとして使うには、こちらのほうが便利かもしれませんね。
速記技能検定試験問題集
速記の資格である「速記技能検定」の過去問集。
日本速記協会のホームページでは、ほかにも「標準用字用例辞典」や「発言記録作成標準」といった専門書を購入することができます。
文字起こし&テープ起こし即戦力ドリル
文字起こし・テープ起こしの練習問題が付いたマニュアル本。
具体的な文字起こしの仕事についても学ぶことができます。
プラチナ プレスマン シャープペン 速記用0.9mm芯2B
「プレスマン」の名前の通り、昔から記者に高い評価を得ているシャープペン。
芯が折れにくい仕組みを搭載しており、速記にも最適です。
ライフ ノート ステノグラファー センター罫入り N10
通訳やフィールドワーカーなどに高い人気を誇るノート。
ステノグラファー(速記者)の名前の通り、速記用途にも最適です。
速記に資格ってあるの?【速記検定】
公益社団法人・日本速記協会が運営する「速記技能検定」は、文字通り速記の能力を測ることができる資格です。
アマチュア向けからプロを対象したものまで、6つのレベルに分かれており、単なる速記符号の確認ではなく、実践的な文字起こしの技能がテストされます。
同協会では、最近ニーズが増えてきた字幕制作に関連したスキルとして「キャプションライター技能検定」も行っています。
いずれ速記はなくなるの?
速記者は長年、議会や法定などの場面で活躍してきましたが、コンピュータ音声認識技術の向上により、手書きで速記を行う国会速記者は2010年に廃止されてしまいました。
他の現場でも録音した音声データをあらためてパソコンで文字起こしするケースが日に日に増えてきており、リアルタイムで発言を手書きできる速記の技術ニーズは減ってきているようです。
とはいっても、動画字幕の書き起こしなど新たな分野での需要も増えてきていますし、なにより速記スキル自体は個人で活用するぶんには非常に有用な技術です。
1分間に300文字という驚異的なスピードで文章が書けるスキルは、仕事や日常でいまだ利用シーンが多い手書きメモにおいて圧倒的な生産性を発揮してくれます。
音声データを自動でテキスト化してくれるソフトウェアなどもあり、非常に便利なのですが、完全に機械化してしまうと内容への理解度が著しく低下してしまうんですよねぇ……。やはりある程度の手入力は欠かせないのではないかと。
音声ファイルをテキスト化(文章化)するアプリ8種【無料/有料】
今後は、速記専門の職業としての技能ではなく、コンピュータでの文字起こしを行う人が合わせて取得するスキルや、仕事の実務能力をさらにアップさせるスキルとして、速記技術の取得を目指すのが一般的になっていくのかもしれませんね。