- 自分の考えが正しく伝わる文章が書きたい!
- 読みやすいだけでなく、美文と呼ばれるような文章も書いてみたい・・・。
- 接続詞は使うべき? 省くべき? 最適な使い方を教えて!
こういった悩みをお持ちの方のために、日本語でよく使われる接続詞を役割ごとに一覧でまとめつつ、文章における適切な使い方を解説してみました。
いわゆる「文章本」と呼ばれるものを繙(ひもと)くと、しばしば「接続詞は使うべきでない」という論調を見かけます。
これは半分正しく、半分間違っています。
結論を先に書いてしまうと、接続詞はなるべく使わないように意識したほうが良い文章になりますし、文章力も鍛えられるのは事実です。
しかし、ただ機械的に接続詞を取り除いてしまうと、読みにくいだけで、とても「美文」とは呼べない文章が出来上がってしまいます。
その理由を、具体的な推敲手順に沿って例文を用いながら説明しますので、ぜひご一読あれ。
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接続詞とは?
自立語で活用がなく、先行する語や文節・文を受けて後続する語や文節・文に言いつづけ、それらのものの関係を示すはたらきをもつ語。接続詞(せつぞくし)とは - コトバンク
その字面のとおり、前後の言葉や文を接続し(=つなぎ)、両者の関係性を明確にする役割を持つ語が接続詞です。
※自立語ではなく他の語と組み合わせて同じ意味を持つもの(ので、れば、ても、が、のに)は、「接続助詞」と呼ばれます。
主な接続詞一覧
順接:原因のあとに結果がつづく
だから、それで、よって、ゆえに、したがって、そのため、すると、結果
逆接:反対の意味や予想外の内容がつづく
しかし、だが、でも、それでも、ところが、けれども、とはいえ、なのに、にもかかわらず、とはいうものの
並列:前の文章と同じ性質の内容がつづく
また、および、ならびに、かつ
列挙:順番に述べる
最初に、次に、最後に、第一に、第二に、第三に
説明:前の文章を説明する
なぜなら、というのは、だって
添加:追加情報を加える
そして、さらに、しかも、そのうえ、加えて、おまけに、ともあれ、そればかりか
補足:例外や余談を付け加える
ちなみに、ただし、もっとも、なお、実は
言換:前の文章を言い換える
つまり、要するに、すなわち
注目:前の内容から一部分を取り上げる
特に、なかでも、とりわけ
例示:前の内容の例を出す
たとえば、いわば
対比:前の文章と対になる内容がつづく
逆に、一方、対して、反面、むしろ
選択:疑問や選択肢がつづく
または、あるいは、もしくは、それとも
転換:話題を変える
ところで、さて、そういえば、それにしても、それでは
接続詞の正しい使い方
前後の文章が同じでも、接続詞によって全体の意味や読み手の受ける印象が変わります。
また、同じ役割を持つ接続詞でも微妙に印象が異なるため、使用の際には十分注意しなければいけません。
例1:彼女は美人だ。彼女は醜い。
上記のカッコ内には、どんな接続詞が入るでしょうか。
- しかし:一般的な書き方。「醜い」を強調するための対比としての「美人」
- それでも:同じ逆接の接続詞でも、こちらは美人であることを加味してもなお変わらない、といった印象
- あるいは:同じ部分を見ていても、違った見方をすれば受ける印象が異なるというニュアンス
- つまり:美人=性格が悪い、のような決めつけ・偏見
- だから:↑と似ているが、美人であることが醜くなってしまった遠因であるかのような書き方
こんな風に、接続詞ひとつで文章が伝える意味や書き手の感情、受け手の印象がずいぶん異なります。
例2:今日はあいにくの雨模様だ。これから僕は外出する。
こちらの例文ではどうでしょうか。
- しかし:不本意、気が進まない
- それでも:↑よりも語り手の意志や強制力が感じられる
- ところで:話題を転換したように見せかけて、雨模様であることで外出の目的に支障があるような書き方
- なぜなら:自分が雨男であることを強調(文末は「〜だからだ」としたほうがいい)
- だから:雨が降りそうなことがむしろ好都合
接続詞によって、意味が逆になってしまうのがおもしろいですよね。
省略できる(したほうがいい)接続詞の特徴・一例
文中に接続詞を多用しすぎると、冗長な印象を与え、読みづらくなってしまいます。
ついつい気軽に使ってしまいがちな接続詞ですが、文章をしっかり読み返してみると、取り除いても問題ないものが意外と多いことに気がつきます。
省略することが可能な接続詞の例や、省略したことによって生まれる効果としては、以下のようなものが挙げられます。
省略しても意味が通じる
たとえば、「原因→結果」といった文脈は比較的理解しやすいため、順接の接続詞などは、省略しても意味が通じる場合も多いですね。
ただし、あらかじめ内容を理解している書き手と違い、読み手は全体像がわからない状態でそれぞれの文に触れていることを忘れてはいけません。
あなたにとっては理解できる文章でも、読者にとっては丁寧すぎるほどわかりやすく書いたほうがいいケースは想像以上に多いのです。
含みを持たせる
たとえば、前項で紹介した二つの例文。
接続詞がない状態ではどういった意味で言っているのかはっきりとわかりませんが、意図的にその曖昧さを狙うというテクニックもあります。
その文を単体で読んで理解できなくても、前後の文脈からおのずと浮かび上がらせることも可能ですし、あえて省略したこと自体に「意味」を持たせることもできます。
文章にリズムをつけたい
「人民の、人民による、人民のための政治」
接続詞を省略することで文章にリズムを作り出し、印象を強めることが可能です。
外国語由来の手法のようですが、日本語にも応用できます。
接続詞を減らすコツ【例文あり】
接続詞を減らしつつ、意味がしっかり伝わる文章を書くコツは、
これに尽きます。実際に例文を用いて説明しますね。
推敲例1:一般的な直し方
こういった文章があるとします。接続詞は5つです。
事実→理由(説明)→異論(逆接)→例示→逆接→結論(言換)
こんな流れになりますね。
では、まずこの文にある接続詞をすべて取り除いてみましょう。
淡々としてこれはこれで味わいがありますが、さすがに読みづらいですし意味が通りにくいので、いくつかの接続詞を元に戻します。
「しかしながら」は「しかし」に、「にもかかわらず」は「けれども」に、「要するに」は「つまり」に変えました。
接続詞は計3つ。これくらいがバランスもいいのではないでしょうか。
推敲例2:接続詞をゼロにする方法
次に、あえて接続詞をひとつも使わずに、言い回し自体を変えることで対処してみたいと思います。
接続詞はゼロですが、意味はそれなりにしっかり伝わるのでは?
さらに読みやすくするために、話題の転換や結論を強調する目的で改行を使ってみます。
いつもの時間外で書くこともできた。夕食後でもよかった。それをしなかった。
ほんとうの原因は、弱い自分だ。
さらに一行追加してみます。
・・・これは嘘だ。
いつもの時間外で書くこともできた。夕食後でもよかった。それを、しなかった。
ほんとうの原因は、弱い自分だ。
抑揚をつけるために、句読点もひとつ足してみました。
こんな風に、わざと「接続詞を使わない」という縛りを入れることで、かえって印象的な良い文章になったのでは?
おまけ:文章校正ツールを使うと便利。
『文賢』には、接続詞や接続助詞をハイライトする機能があります。
推敲の際はこういったツールを使って、抽出した接続詞を一つひとつ取り除けないか模索していくようにすると、文章を見る目や表現力が鍛えられます。ぜひお試しあれ。