秀逸な小説の書き出しが思いつかない・・・っ!
そんな悩みをお持ちのあなたのために、初心者でも簡単にできる小説の書き出しを書くコツを解説します。
- 小説の書き出しがうまく書けない。
- 冒頭は何から始めるのが正解?アクション?セリフ?あえて日常描写?
- 有名な小説の書き出し例(お手本)や、おすすめの書き方・コツを教えて!
こういった方に役立つ情報になっています。
小説の書き出しを書くコツをネットで調べてみても、見つかるのは既存の有名な書き出しのまとめか、小手先のテクニック論のどちらか一方だけだったりしませんか?
というわけで今回は、秀逸な書き出しの見本を大量に見られるおすすめサイトを紹介しつつ、物語における役割をふまえた書き出しの書き方について解説していきます。
- 秀逸な書き出しが持つチカラ
- 小説の具体例から学ぶ書き出しテクニック
- やってはいけない書き出し例
- おすすめの書き出し系サイト・本まとめ
内容はこんな感じ。
やってはいけないNG例なども具体的に紹介していますので、この記事を読めば平凡すぎる書き出しのせいで本文まで読んでもらえない・・・という事態が減るはず。
これらのノウハウは小説だけでなく、あらゆる文章に応用できますので、ぜひ最後までご覧ください。
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秀逸な小説の書き出しテクニック(コツは7つ)
早速ですが、冒頭一行で読者の心をつかむための具体的なテクニックを、有名な小説の例をもとに解説します。
- 自己紹介(自分語り)から書き始める
- 事件・アクションから書き始める
- 会話・セリフから書き始める
- 名言・名フレーズを引用する
- 描写から書き始める
- 最後の一文と関連させる
- 違和感(引っかかり)や謎を作る
ポイントは上記の7つ。それぞれ詳しく説明していきますね。
自己紹介(自分語り)から書き始める
吾輩は猫である。名前はまだ無い。
引用:夏目漱石『吾輩は猫である』
特徴的な人物、例えば波乱万丈の人生を歩んできていたり、変わった考え方を持っている人の場合、自己紹介や自分語りから書き出すことで、強烈な個性を演出することができます。
日常のふとしたエピソードなどを添えることで、読者の共感を得ることも可能です。
事件・アクションから書き始める
ある朝、グレゴール・ザムザが気がかりな夢から目ざめたとき、自分がベッドの上で一匹の巨大な毒虫に変ってしまっているのに気づいた。
引用:フランツ・カフカ『変身』
印象的なエピソードを語る場合、すでにそれが「起こってしまっている」状態から書き始めると、読者の興味をぐっと引きつけることができます。
上記の例のように、何かしらの異常な状態の描写でもいいですし、派手なアクションでスピード感を文章に持たせるなどの方法もあります。
会話・セリフから書き始める
「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね」
引用:村上春樹『風の歌を聴け』
誰から聞いた言葉や、自分で創作した言葉などを、印象的なセリフにして書くことで、文章全体のテーマを端的に語る方法です。
一般的に読者は地の文よりも会話文のほうが読みやすく感じる傾向があるので、エピソードを語るときも会話風に書くといいかもしれません。
名言・名フレーズを引用する
幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである。
引用:トルストイ『アンナ・カレーニナ』
この冒頭文は、様々な作品に引用されていますよね。
こういった多くの人が知っている名言や名フレーズを書き出しで引用することで、文章全体のテーマにつなげていくと読者の理解もスムーズです。
描写から書き始める
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。
引用:川端康成『雪国』
印象的な風景や状況を、情感豊かな描写で表現することによって、読者がまるで登場人物になったかのような気分になります。
文章世界に引き込む上で、この効果は非常に有用です。
最後の一文と関連させる
今年は柿の豊年で山の秋が美しい。
引用:川端康成『掌の小説』
書き出しと終わりの文章を上手くつなげることで一体感が生まれ、作品が美しくまとまります。
上記の川端作品は、冒頭文と結びの一文が同じという非常に珍しい構成。他にも冒頭で提示した謎に最後の一文で答えを出したり、同じ対象の描写を変えることで主人公の変化や成長を表すといった手法があります。
違和感(引っかかり)や謎を作る
西の魔女が死んだ。四時間目の理科の授業が始まろうとしているときだった。
引用:梨木香歩『西の魔女が死んだ』
春が二階から落ちて来た。
引用:伊坂幸太郎『重力ピエロ』
不思議な言葉の組み合わせや、謎・矛盾など、読者が引っかかりを覚える何かを文章に入れておくと、その違和感の正体を突き止めるために読者は自然と先を読みたくなってしまいます。
このテクニックは、これまで紹介した6つの手法と組み合わせることで、さらに魅力的な書き出しを作ることができます。
魅力的な書き出しが持つ「3つのチカラ(役割)」とは?
そもそもなんで「書き出し」にそこまで力を入れないといけないの?
こんな疑問をお持ちの方のために、ここからは物語における「書き出し」の重要な役割について解説します。
- 続きの文章を読ませる
- 読者の共感を生む
- 文章全体のテーマを象徴する
大切なのはこの3つ。それぞれ詳しく説明していきますね。
続きの文章を読ませる
すべての文章や言葉は「先を読みたいと思わせること」が目的の一つであると言われています。
最初に目にする書き出しによって、読者は文章全体の面白さ・有用さを判断します。ここで合格できなければ、先の文章は読んですらもらえず「駄文(駄作)」のレッテルを貼られてしまうのです。
最初に受けたイメージ=第一印象が最も強く残る(初頭効果)後から第一印象を覆す情報を与えられても受け入れづらい(確証バイアス)
人間にはこういった特徴があります。
これは対人コミュニケーションだけでなく、文章においても同様なのです。
読者の共感を生む
書かれていることを読者が「自分ごと」として受け入れてくれなければ、積極的に文章を読み進めてもらえませんし、せっかくのドラマや情報も上滑りしてしまいます。
たとえ登場人物や作者の意見に同調できなくても、そこに書かれていることから
自分だったらどう感じるだろう?(自分ならこうするのに・・・)
こんなふうに想像してもらえれば、読者は先を読み進めてくれます。
反発だって立派な共感のひとつ。好きの反対は無関心なんて言いますしね。
文章全体のテーマを象徴する
文章全体で語られること(テーマ)を、書き出しで端的に示すのは必須とも言えます。
PREP法のようにわかりやすく結論から書いてしまう方法もありますし、最後まで文章を読んではじめて書き出しの本当に意味に気づくようなやり方も、読者の心に強く残ります。
【やってはいけない】NGな小説の書き出し例3つ
書き出しのもつ役割がわかると、自ずとやってはいけない書き出しのカタチも見えてきます。
- ダラダラした説明文
- 平凡な日常描写
- 意味不明すぎる文章
特にこの3つは、よほど文章力に自信のある方でない限りやらないほうがいいでしょう。それぞれ具体的に解説していきますね。
ダラダラした説明文
設定に凝った物語など、どうしても読むための前提となる説明が多くなってしまう作品でも、事件や会話などをうまく使ってさりげなく描写で伝えるようにしましょう。
小説以外の文章でも、結論を最後まで言わないで退屈な説明や言い訳ばかり書いてある文章は最後まで読まれません。ご注意を。
平凡な日常描写
物語は主人公の日常に変化が生まれることから動き出す・・・といっても、冒頭からただの日常描写ばかり書き連ねてしまっては退屈の極みです。
日常の中にも、のちの事件を示唆するような出来事や会話を加えるなど、描写を工夫して読者を上手に惹きつけましょう。
意味不明すぎる文章
「謎」を提示することを意識しすぎるあまり、まったくわけがわからない意味不明な出来事や描写をいきなり放り込んでしまうのも危険です。
読者の想像力をまったく掻き立ててくれない文章は、どれだけ「ふしぎ」が詰まっていても駄文と言わざるをえません。
おすすめの書き出し系サイト・本6選
書き出し小説大賞
先日、第229回の秀作が発表されたばかりの「書き出しだけ」の小説賞。
一般から募集した受賞作の数々は、たった一行で様々なドラマを見る人に想像させる秀逸なものばかり。作品がまとめられた本も出ています。
本の書き出し
様々な小説の書き出しが、ランダムに一覧表示されるユニークなサイト。
それぞれの書き出しをクリックすると、作品の説明やAmazonリンクが載っています。
書き出しを考えったー
名前を入力するとランダムで書き出し文を自動生成してくれるWebアプリ。
診断メーカーには他にもいくつか書き出し系のアプリが投稿されているようです。
小説書き出しクイズ
書き出しの一文から作品を当てるクイズ。ネットで検索すると色々なサイトで実施されているもよう。
【みんなの知識 ちょっと便利帳】クイズ・雑学キング 小説の書き出し文学作品の「書き出し」クイズ (全10問) : トイダス
書き出し「世界文学全集」
翻訳家・柴田元幸氏による世界文学73作品の「書き出し」を集めた本。
すべての作品が氏による「新訳」であるのもポイントです。
名作の書き出し~漱石から春樹まで~
15編の名作を書き出しから読み解くというテーマの本。
Kindle Unlimitedの会員なら無料で読めます(2022年2月時点)。
まとめ
今回は、小説の「書き出し」について具体的な書き方を解説しました。
ここまで読んでいただいた方は既にお分かりかと思いますが、最後に念押ししておきます。
書き出しにこそ、すべてのノウハウやスキル・アイデアを注ぎ込むべき
これに尽きます。理由は以下。
- 大量の文章や作品が溢れかえっている現代では、読者はますます飽きっぽく、移り気になってしまっている。
- 書き出しで「つまらないかも・・・」と思われてしまうと、その先すら読んでもらえず本を閉じられてしまう。
- 逆に、秀逸な書き出しは読者の想像力を爆発させ、先を読まずにはいられない気分にさせてくれる。
専門の小説講座などでも「書き出し」は時間と手間をかけるべき必須要素として言及されています。
現役作家・編集者でもあるプロ講師たちだからこそ、その重要さを恐ろしいまでに実感しているということですね。
書き出しで失敗すれば、せっかくの壮大な物語も無意味です。
しっかりと知識・スキルを積み上げつつ、そのすべてを「書き出し」に注ぎ込みましょう!