短い文章に憧れる。
内容自体の簡潔さは言うまでもなく、一文一文の細部に至るまで無駄が一切ない文章は、研ぎ澄まされた日本刀のごとき洗練を感じさせてくれる。
世界の名だたる文豪たちも「文章を削る」ことに並々ならぬこだわりを持っているようだ。
If it is possible to cut a word out, always cut it out.(言葉を削ることが可能なら、必ずやれ)
ジョージ・オーウェル
As to the adjective: when in doubt, strike it out.(形容詞は迷ったら削れ)
マーク・トウェイン
I believe the road to hell is paved with adverbs.(地獄への道は副詞で舗装されている)
スティーブン・キング
かのヘミングウェイも修飾語が少ない文章を書くことで知られている。
書くことは、削ること。
そう言っても過言ではない。いや、過言か。
というわけで、今回は文章を削る方法についてまとめてみた。
前回の記事とあわせてご覧いただければ幸いだ。
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文章を削るためのチェックポイント9つ
まずは文章をチェックする際に削りやすいポイントを一覧でまとめておく。
形容詞・形容動詞
- きれいな・美しい
- さまざまな
- おもしろい
- 最適な
- 大きな
- 数多くの
副詞
- とても
- すごく
- 極めて
- きっと
- もちろん
- じっくり
- しっかり
- ちゃんと
- ずっと
- もっと
- 決して
- 大抵
- 既に
助詞・副助詞
- など
- から
- ので
重言・重複表現
- 頭痛が痛い
- まずはじめに
- いちばん最後
- より一層
- あとで後悔
- 事前に予約する
記号
- 読点:、
- 鉤括弧:「」『』
- 括弧:()
- 感嘆符:!
- 疑問符:?
接続詞
- なぜなら
- ですが
- けれど
主語
- 私は
- 彼は
- ◯◯さんは
冗長表現
- 〜という
- 〜といった
- 〜について
- 〜すること
- 〜のような
- 〜に関しましては
- 一般的に
- 基本的に
婉曲表現
- 〜と思われます
- 〜させていただきたく存じます
- 〜できかねます
その他・文章を短くできるポイント
- 比喩表現を削る
- ひらがな・カタカナ→漢字
- ですます調→だ・である調
文章を削る(短くする)3つの手順
具体的に文章を削る方法は、以下の3ステップ。
- 書きたいことをすべて書く
- 主語と述語に線を引く
- 容赦なく削る
それぞれ詳しく説明していく。
書きたいことをすべて書く
ひとまずは削ることを一切意識せず、書きたいこと・書くべきことを思いつく限りすべて書き出す。
書いている最中で思いついたことなども、余計・余分に思えるようなことも、一字一句余さず書き残していく。そういった中に思いがけないアイデアや絶妙な表現が生まれることもある。
文章を書く前にどの程度まで下書きや構成を準備しておくかは人によるので、今回は割愛。詳しくは別記事をご参照あれ。
主語と述語に線を引く
一通り書き終えたら、一文ごとに主語と述語を抽出する。
前項で書いたように主語は削れるケースもあるが、この時点ではひとまず書いておいたほうが内容が整理しやすい。
手書きの人はマーカーで。パソコン派の人はエディタのマーカー機能や装飾(下線)を使うといい。
文章全体の構成にも目を向け、論理構造が整っているかも確認する。
PREP法でいうところの「結論・理由・具体例」にも印をつけておくと、文章を俯瞰して見るのに役立つ。
容赦なく削る
ひたすらに余計な言葉や表現を削っていく。非情に、無情に。
一度書いたものを消していくのは、掘った穴を埋める作業のようで徒労感が募る。
人によっては身を削る思いすら感じるかもしれない。しかし、いずれは慣れる。
慣れてくると、むしろ削ることに快感さえ覚えてくる。良い傾向だ。
ちなみに、有名な文章校正ツール『文賢』を使うと以下の項目が自動チェックできる。
- 重複表現
- 二重否定
- 読点
- 接続語
- 冗長表現
文字数カウントや漢字の使用率も確認できるので、興味がある方はぜひ試してみてほしい。
おまけ:文章を削り切ったあとは・・・
これ以上不可能というレベルまで文章を削り切ったら、再び「加筆」の作業に移る。
全体のリズムや内容の軽重を考慮しつつ、足りない文言や具体表現を書き加えていく。
加筆を進めていくと、いつの間にか余計な文言が増えていることに気づく。よって、また削る。再び加える。
この繰り返し作業が、折り返し鍛錬を経た日本刀のような鋭い文章を作り出していく。そう信じている。
まとめ
今回は、文章を削る方法について解説してみた。
もっとシンプルに「短い文章を書くコツ」を知りたい方は、以下の3つを押さえておくといい。
- 5W1Hでまとめる
- 修飾語はすべて削る
- 接続語を使わず、文を区切る
とりあえずこの3点を覚えるだけで、あなたの文章は劇的に変わるはず。
こんな偉そうな記事を書いてはいるが、あらためて自分の文章を読み返してみると、余計な言葉が出てくるわ出てくるわ。
正直、ヘコむ。ライターを辞めたくなるほどに。
前回から文体を変えてみたのも、こちらのほうが余計な言い回しが入りづらいのではと考えた次第。
折を見て、過去記事も少しずつ手直ししていきたい。推敲の道に終わりはない。
あなたも自分の文章を修羅のように削って、ヘミングウェイを目指そう。